“HOME OF CHAMPIONS”

ケニアのイテンにケニア人の市民ランナーはいない。

“WELCOME TO ITEN HOME OF CHAMPIONS”

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イテンから生まれるマラソンスター (時にトラックスター)は過去も今も世界中のレースを制している。

そしてイテンのランナー達は皆が明日のマラソンスターになる為に必死に練習を重ねている。

イテンと日本との競技環境の違いは何かと考えると、

イテンでは決して甘い環境に置かれる事無く、ここイテンから誕生したスターを間近に見ながら自分を律し、彼らに憧れを持ち、敬意を示し、時には競争を仕掛け、高いモチベーションで人生、生活をかけて競技に取り組んでいる所ではないだろうか。

そしてそういう意識の高い選手が集まりグループを形成して質の高い練習に取り組んでいる。その99%が”市民ランナー”ではない明日を夢見るアマチュアランナーである。

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日本では、五輪以上に箱根駅伝の一般的な認知度や人気が大きくなってしまったことで、五輪を目指す為の箱根駅伝が、もはや建前となってしまった。

例えば、今年のリオ五輪の男子マラソンの日本代表選手3人よりも、青山学院大学の選手の方が一般的には有名だと思う。

この大会は、関東の大学駅伝の一番を決める大会であって、世界の人々は箱根駅伝のことさえも知らない人がほとんどである。

駅伝は日本独特の文化であるが、国際千葉駅伝がなくなってしまった現在では、駅伝に向けてのトレーニングが、トラックやマラソンへの専門的なトレーニングであるかどうは疑問である。

その点、最近の日本の選手で言うと、大迫傑選手は実力も伴っているので、駅伝から世界に羽ばたいたという表現も出来るが、彼はあくまで日本の駅伝文化で育ちながらもその環境に居座る事無く、自ら次へのステップを引き寄せた、数少ない”グローバルスタンダード”の選手に思える。

そういった選手が日本の未来の陸上長距離界のスターの入り口を開いているので希望が少しながらある事は確かであるが、マラソン選手においてはいまだに糸口が見出せていない。

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イテンでは、マラソン2時間03分13秒の自己記録を持つウィルソン・キプサング選手の練習パートナーを務めるルーク・キベット選手と話した。

彼は現在21歳。自己記録はハーフが63分ぐらいだそうで、大会での実績はほとんどないという。

そんな選手がウィルソン・キプサング選手の練習パートナーを務められるのか?

率直な疑問を抱いたが、

実際はこうだろう。ケニアの大会は距離も不正確な場合が多いだろうし、ましてや2400mの高地での大会では記録も望めない。

彼が日本の上尾ハーフや丸亀ハーフに出れば60〜61分台は出るだろう。つまり、記録というものはその選手の強さを示す一つの基準に過ぎない。

彼が日本の日体大記録会やそれらのハーフに出れば良い記録などいとも簡単に手に入れてしまうだろう。

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実際にルークは、標高2400mのイテンのカマリニの土トラックでウィルソン・キプサング選手とのインターバル走1000m×10本を一緒にこなしていた。

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タイムは2分50秒前後で7本、そこから最後の3本はペースアップした。標高2400mの土トラックでこのタイムでこの練習が出来るのだから実力は同世代の日本人選手よりかは高そうだ。

しかし、世界的に見ても、ケニアでも彼を知っている人はイテン周辺ではあまりいないと思う。

ルークは「ウィルソンのように活躍して自分もいつか日本や世界のマラソンで活躍したい」と話してくれた。そうやって近しい人物の活躍に刺激を受けて、自分のモチベーションとなっているのだ。

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日本ではメディアの取り上げ方も陸上競技においては箱根駅伝などの学生駅伝を頂点にしている報道の仕方は他の短距離や、跳躍や投擲種目の選手が羨む理由も分かる。

箱根駅伝で活躍すればスターになれると思って頑張る選手が、その後箱根以上の目標を見つけて活躍するのは至難の業で、そうなるためにはあくまで箱根駅伝は通過点として淡々とこなすことが求められる。

それはどういうことかと。

シンプルに考えると、選手は、自分にとってよりよい環境、つまり、練習に集中出来る環境を見つける事にある。

それは高地で長期的に質の高い練習をこなすこと、食べる事、休息する事、このシンプルな事を“なんのストレスも無く置ける環境”に身を置いた方がいい。

箱根駅伝は余計なストレスやプレッシャーが選手や監督・コーチにかかっているのは世間も承知しているが、それは世界的に見ると異常な現象であると思える。

さらに、メディアの過剰な報道姿勢は選手に勘違いをおこす。選手の実力は2流でも、いかにも1流選手のような扱いを受けると自分ではそのつもりでも、モチベーションの維持が難しい。

関東の駅伝大会で区間賞を獲得した選手が、五輪で活躍した選手よりもメディアの注目を浴びるのは正直おかしいと思うし、そんな種目は他にあるのだろうか。

謙虚である事は人間が成長する一番の秘訣だと思う。

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お金や名誉を手に入れる事はすばらしい事だが、手に入れたその後が重要である。

ケニアで成功してお金を手にしたランナーが、練習環境を変えて失敗するパターンは過去に多くみられる。

そんな中、リオオリンピックのマラソンで優勝、ナイキのサブ2プロジェクトにも起用され、現在世界最強のマラソンランナーのエリウド・キプチョゲ選手でも、何事も便利とは言えない辺鄙なケニアの街カプタガトで、厳しい生活環境の中、現在も仲間達と練習に取り組んでいる。

こういったように“ハングリー精神”というは、選手の育ち方も重要だが、あくまで日頃のストイックな生活の中からうまれるものである。

日本人が栄養面に配慮された食事を食べ続けても、質素な食事を食べ続けるランナーに勝てないのはなぜだろうか。

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現在の日本の長距離の駅伝主体の競技体系も問題である。それに加え、企業型スポーツの恵まれた環境、大学であっても寮や食事面、サポート体制の厚さなど、一見選手には良いと思える環境のようだが、それでは本当の意味での東アフリカ勢の強さに見て取れるハングリー精神がうまれないと思う。

イテンが“ホームオブチャンピオンズ”と呼ばれる理由はそこにある。

日本でも、高卒の有望な選手が、修行できるような…箱根駅伝に見向きもせず。このような環境に数ヶ月滞在出来るようなサポートや体制があればいいのではないかと思う。

こういった経験は若ければ若い方がいい。若い方が吸収力が高い。それが、日本の長距離選手が世界に近づける一つの方法なのかもしれない。

 

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Posted by Tsukasa Kawarai

Photo by  Tsukasa Kawarai

(c) 2017 T.Kawarai all rights reserved

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